古田つかささんよりレビューいただきました‼️
男性の視点でこちらも素敵です。
【視聴レビュー】
2020/06/27
塩入俊哉 feat. 稲垣潤一 〜チェリスト古川展生を迎えて
「夏めく風に想いを…」
+++++++++
コロナ禍だが、いや、コロナ禍だからこそ、かなり贅沢な音楽体験をすることができた。
稲垣潤一、西城秀樹などのバックを長年務め、近年はフィギュア・スケートのコンサート音楽監督も務める塩入が、ライヴ活動ができないもどかしさを逆手に取って配信ライヴを敢行。ゲストは稲垣潤一をヴォーカルに、古川展生をチェロに迎え、前半は塩入中心のライヴ、後半は稲垣を交えてのライヴ。非常に贅沢。しかも少人数のライヴということは、その隅々まで聴覚と視覚で堪能できる。そして緊張感や熱量をも感じることができる…。
「夢のしずく」で爽やかな陽の光を感じながら、転がるようなピアノの音色に思わず目を瞑る。一変、「Otonal」の情熱とチェロの豪快さが一気にライヴ感を加速させる。塩入、古川、集中力がすごい。「TOKYO 午前3時」は非常にドラマ的な曲調というか、チェロが主旋律を奏でるとなぜこうも温かい物悲しさを感じさせるのだろう。ピアノのフレーズも邪魔にならず且つ埋もれずに鳴らされる。ズルい。
「リベルタンゴ」。嗚呼恐ろしい!直前まで他愛もないことを話していた2人なのに、イントロで一気に世界が(ステージ照明と同様)赤くなった。この曲はチェロが主役だが、ピアノの強弱ついたフレーズが疾走感を増していく。こういう激情型の曲の後に「荒城の月」、しかも古川のみ!唱歌がどこか遠い国のクラシックになっている…エグい。塩入アレンジとのことだが、古川、非常に、非常に大変だったのではないだろうか…そしてその表現力、すげぇ。スゲェ。
そして満を辞して稲垣潤一登場。塩入と2人きり。ここに懺悔する。私は稲垣をナメていた。ハイトーンな歌声はもう聴けないとタカを括っていた。しかし「君」の歌い出しを聴いて私は仰け反った。そして驚きのヴォーカリゼーション。喉の開き方、マイクの距離、タンギングとマイクの位置…プロとはこういうものか。稲垣、もうすぐ67歳である。何か特別なものでも食べてるのか?と言いたくなる。一発で彼と分かるマイルドなハイトーンはそれだけで専売特許。しかもタイムレス。誤解を恐れずに言えば、歌の主人公が何歳なのか全く分からなくなる。
「楽園伝説」、古川参加で「日暮山」と続くが、塩入のピアノにハッとさせられた。彼のピアノはシンガー扇 さや (saya)のライヴで拝見しているが、その時と全く異なる演奏のアプローチをしている。sayaの時は「楽曲を支える」ことで歌を最大限引き立てるのに対し、稲垣の時は「楽曲を奏でる」ことで歌と同化し楽曲を構成しようとしている(ように聴こえる)。現場ごとでアプローチが変わるのは何の仕事であっても同じだが、共通して感じるのは「独り善がりの音構成ではない」こと。sayaであれ稲垣であれ、歌中心のアレンジや構成をみれば、それを十分に感じることができる。これ、シンガーの伴奏なんだから当たり前と思ってはいけない。そこをちゃんと意識できるアレンジャーが今日日、どれだけいるのか…(と素人ながら思います)。
塩入たってのリクエストで実現したという「生まれる前にあなたと」。これは是非、イヤホンではなくヘッドフォンで音量大きめで聴いてほしい。ピアノが降ってくる、チェロが波となる、そして歌声が身体の中から木霊する。曲後しばし放心状態。「クリスマスキャロルの頃には」の軽やかな悲しさはそう真似できないし、私の大好きな「夏のクラクション」…『鳴らしてくれ』を勝手にコーラスなんてしてみたりして…音楽っていいですねぇ。
(「Up To You」「123」でのタンバリンの使い方、私は初見です…その手があったか的発見です)
終幕は塩入版「AVEMARIA」。雄大な川の流れを勝手に想像しつつ。しかも景色は日本、四万十川。なんでだろう、理由は分かりません、すみません。
こんな時期だからこその珍しい音楽体験。レアな一期一会。素晴らしいひと時に感謝。
(最後に…塩入主導MCというものを初めて見たが、意外な進行巧者ぶりで吃驚。が、音楽監督を務めるくらいだ、ある意味当然か…でも服装は…何も申し上げますまい笑 そして古川=「音楽界のザキヤマ」…何も申しますまい笑)
+++++++++
Members:
塩入俊哉 (Pf) 古川展生 (Vc) 稲垣潤一 (#7-15 on Vo)
Set List:
1 夢のしずく
2 あの頃のままで
3 Otonal
4 TOKYO 午前3時
5 リベルタンゴ
6 荒城の月
7 君
8 楽園伝説
9 日暮山
10 もうひとつの夏
11 生まれる前にあなたと
12 クリスマスキャロルの頃には
13 Up To You
14 123
15 夏のクラクション
16 AVEMARIA
(2020/06/27)